スローカロリーな食べ方
糖尿病など生活習慣病の改善やダイエットのために、糖質の「量」のみに着目するのではなく、それらが「体内でどのように使われるのか」を考慮した食べ方を実践することが大切です。
Point1 食べる順番が血糖値に影響
血糖値を急激に上昇させるのを防ぐ手軽な食事療法として、食べる順番を変える方法が関心を集めています。空腹時に糖質の多いごはんなどの主食をいきなり食べてしまうと、糖質が急速に消化・吸収されて、血糖値が急激に上昇し、膵臓からのインスリンの分泌を促してしまいます。まずはサラダなど血糖値を上げない料理を先に食べて、ごはんやパン、麺類などの主食など糖質を多く含む料理は最後に食べるようにしましょう。
具体的には
- サラダなど食物繊維の多い野菜料理、
- たんぱく質中心のメインのおかず
- ごはん、パン、めん類など糖質中心の主食
の順番となります。
この順番で食べるだけで、料理ごとの栄養バランスやエネルギー量などを細かく計算することはないという手軽さが評価されています。
Point2 よく噛んでゆっくり食べる
目安は約20分。よく噛んでゆっくり食べることで、満腹中枢が刺激され、過食も防げますし、高血糖改善の効果がある消化管ホルモンの一種「インクレチン」の分泌がより高まります。また咀嚼回数を増やすために、大きめに切って調理するといった工夫をするのもいいでしょう。
スローカロリーな食品
体内で速く吸収される糖質は、糖尿病や肥満などの生活習慣病のリスクを高めます。そこで、ゆっくりと糖質が吸収される食品を選ぶことが「元気で太りにくい健康な体づくり」へとつながります。
Point1 食物繊維が豊富な食材
ゆっくりと糖質が吸収されるのは食物繊維が豊富な食材です。食物繊維には満腹感を得られる、腸内環境を改善するなどの利点があります。
特に海藻類、きのこ類、乾物類、こんにゃくに含まれる「水溶性食物繊維」の多くは水に溶けると高い粘性を示し、食事内容物の胃内滞留時間を延長させ、腹持ちがいいという特徴があります。加えて小腸内で糖質の消化・吸収をゆるやかにし、急激な血糖値の上昇を抑えることから、糖尿病の予防や治療において重要な効果が期待されます。さらに血清コレステロール値を正常化し、動脈硬化を予防する効果もあります。
Point2 歯ごたえのある食材
過食を防ぐには、咀嚼回数を増やし、時間をかけてゆっくり食べることが大切。そのためには、歯ごたえのあるかたい食材がおすすめです。野菜であれば根菜類、ごはんであれば玄米や雑穀を選びましょう。
Point3 砂糖の質も吟味する
砂糖は、上白糖よりもミネラル分を多く含む黒糖やきび砂糖がおすすめです。血糖値が上がりにくいことに加え、善玉菌を増やし、腸内環境を良くするオリゴ糖や、小腸からの消化吸収がゆっくりな糖質「パラチノース」を生活に取り入れるのもいいでしょう。
スローカロリーなライフステージ
身体に必要なエネルギー量や栄養バランスは、年齢などそれぞれのライフステージごとに異なるものです。糖質はエネルギーの源であり、脳機能の維持やスポーツのパフォーマンス向上に欠かせないものですから、特に成長期の子どもや妊婦さん、高齢者の方にとっては、やみくもに糖質を「カット」するのは危険であり、上手に糖質を摂取することが必要となってきます。
成人男性の肥満・メタボ増加傾向のほかにも、日本人の栄養課題は多岐にわたっています。例えば若い女性については、痩せ過ぎのため低体重児が生まれやすくなっています。低体重児で生まれた子供は、大人になった時に生活習慣病になりやすくなるといったデータがあることから、大きな課題として捉えられています。
そして高齢者は平均してエネルギー摂取が不足しています。栄養不足が理由として考えられる高齢者のサルコペニアは、歩行障害や転倒といった要支援・要介護状態のきっかけとなるため、これらの予防対策は非常に重要です。また子どもにおいても、糖尿病や肥満の割合は年々増加傾向にあり、注意が必要です。
疾患予防と健康
糖尿病をはじめ、病的な状態にある方にとって、糖質制限は大変重要です。しかし健康な方やメタボの予備軍の方々の場合、生活習慣病予防の観点においては、「食べ過ぎない」という「量」の視点だけではなく、「どんな糖質をどのように食べるのか?」「それぞれの糖質の代謝のされ方は?」といった「質」の視点を持つことが大切です。
またスポーツの分野では、パフォーマンスを高めるために必要な糖質の質について注目が集まっており、スローカロリーをトレーニングに取り入れるという考え方が広まりつつあるようです。スポーツ選手にとって、適切なエネルギー補給はとても大きな課題です。主たるエネルギー源である糖質の吸収がゆっくりであれば、長い時間かけて体内に供給されるため、運動時のエネルギー不足を起こさないという利点があります。
とりわけマラソン選手をはじめとする持久系のアスリートのエネルギー補給には、スローカロリーの考え方が有用といえるでしょう。